郵政民営化についてのまとめたもの

以前、“この話題について書いてみたいと思ってた”と書いたので、さっそくだし有言実行で。

郵政民営化

原点

郵政民営化の原点として挙げられる要素としては、

①個人金融資産の4分の1を占める官の資金を民間による市場へ解放
②郵送コストを抑える為、官業ではなく民間業者と同水準へ
特定郵便局長世襲制による既得権益の排除

の3つが原点であったと思います。

( 参考資料 )

個人金融資産

現在1400兆円超あるといわれている個人金融資産ですが、
その4分の1を郵政公社による郵便貯金や簡易保険を占めているわけです。

逆算すると、郵政以外では残り4分の3を持っているわけで、
額にすると、1150兆円になります。

その中で銀行、証券、保険といった3大金融に分けられる。
銀行だと、グループの連結の資産額ですが、

みずほフィナンシャルグループが140兆円
三井住友フィナンシャルグループが100兆円
三菱東京フィナンシャルグループが104兆円
UFJホールディングスが82兆円

(参考資料 『最新業界地図2004』東洋経済新報社より)

と大手4グループ合わせて勝てる程度。
因みに、郵便貯金>簡易保険であり、2:1くらいの比率でしたか。
郵便貯金では220兆円、簡易保険120兆円超ですかね。

一応、公式のサイトで確認してきましたが。「 日本郵政公社 」

日本郵政公社が民営化されてこの資金が市場に一気に放出された場合、

100兆円前後の資産を持つ銀行グループに対して、いきなり200兆円を越えた郵便貯金銀行なるものが現れるわけです。

さて、市場は困った。市場では取り扱い金融資産額が増えるのは望ましい。が、急にお隣にどでかい銀行が競争を仕掛けてきたらどうなるか?

しかも、郵政公社は税制が優遇されている。
そのような巨大な競争相手がいつ本格的に動き出すのか、
民間企業に融資を行うようになれば、メガバンクといえど苦しい立場になる。

政府がセーフティネットでもって、万一資産割れが続くようになっても補償してくれるというような期待も未だに残ってるのもあるでしょう。

ただ、政府がセーフティネットを張って、郵便貯金銀行を守るようならば、公正な市場論理が働かない。むしろ、次にどこが潰れたとしても、守ってくれるというモラルハザードが生じてしまう。

そういうところから、郵政民営化が望ましくないという見方もあります。

郵便貯金と簡易保険の行方

郵便局を入り口として、その資金は政府系金融機関にお金が流れていきます。
中小企業金融公庫やら国民生活金融公庫など。
そのほか、長期国債の受け皿にもなっているし、
財政投融資にも使われている。

財政投融資公共投資にも使われており、
どこに必要なのかわからないようなものに回されていたりします。

国債について

長期の債権は国・地方自治体発行を含めると700兆円を越えており、
民間金融資産の半分を越えています。

そのような状況で国債は発行を続けていき、
それを日本銀行郵政公社が受け皿になる。

国債発行には理由は色々とありますが、税収だけでは国を運営できるような状況にまったくないからというのがあります。
税収は50兆円を越えてないですし。歳出は82兆円前後。
足りない部分をを国債で賄う。

国債は借り換えを行うことが出来るので、
結局は消化されずに溜まっていく一方。
金利を払わなければならないため、長期金利が上がると大変好ましくない状況に追い込まれる。
借りなきゃ返せない。そして借りれば借りるほど利子に支払う額は増えていく。

財政収支

財政のプライマリーバランスを黒字化させるというけれども、税収がない中でどのように収支をとんとんにするのか、見ものですね。ま、税金上げていくのが手っ取り早い方法なんだけれど。

景気がよくなれば消費が増えていき、消費が増える。
消費が増えていけば、インフレーションへ導いていき、所得が上がる。所得が上がれば、経済成長率が伸びるし、税収も増えていく。で、過度なインフレーションを避けるために、税率を上げ、インフレーションの調整をはかる。

こんな簡単にいっていれば、失われた10年だとか言われることもないでしょうし、
今後の日本の景気問題についても、心配することもないのでしょうが。

結局は、税収が増えないと国債発行へ結びつくことは変わりなし。

そんなこんなで

問題は山積み。そんな中で民営化していいのかどうかという論議になっています。
流れてる出口問題については解決を望む声があり、民営化するならば郵便貯金と簡易保険は圧縮するべきだという声が上がってる状況です。

民間業者との同水準へ

すでに動き始めてる面がありますね。
大手コンビニのローソンでの郵便物の承りが。

大手ヤマト運輸の訴訟

ローソンと取引をしていたヤマト運輸が、郵政公社に対して訴えを起こしたのも、もう去年のこと。
「不公正な取引」にあたるのではないかとのことで。
今までの額より、結構下げてた印象が強いのですが、どうなのでしょうか?

ヤマトでの試算額より、下回るようなことを当時の報道で目にした記憶があります。

実際の郵政公社のはじき出した数字(価格ーコストに相当する額)がわからないため、どのように問題なのかが、イマイチピンとこない。

でも、ここでも巨大な公社の参入に対して、民業を圧迫するのではないか…との声もあって、なかなか目が離せない問題で。

民営化による問題点

市場原理が働く

市場原理が働くということで、都心部は統廃合されても大きい問題は目に付きませんが、過疎地に当たる地方や、民間の銀行がない地方にはどう対処するのか?

そこを補う為にネットワーク事業を行い、
全国一律にすべきであるということが盛んに議論なされています。


大手銀行は、都心部に集中しやすく、地方にいくほど少なくなる。
基盤とする地域が都心であることもさりありながら、
需要が大きいところに展開するのが供給者としての立場。

地方で需要が取り込めないと判断する、及び地方に出ることによるコストが収益を上回るため、地方に回らなくなるのではないか、というのが市場原理に基づいての判断になります。

つまり、郵政公社であるならば、全国一律サービスを展開しているから、わざわざ民営化にして、利便性を欠くようなすることの必要性が見られないのではないか?
というのがあります。

また、
特定郵便局の局長は世襲制で取り決められ、また試験が難しくないため、世襲によって引き継がれるという事実があります。
その特定郵便局の局長による、「票」が欲しい方々ほど、民営化の意見に反対している。

統廃合

全国一律サービスがなくなって特定郵便局の統廃合が進めば、過疎地出身者には票が集まらなくなるし、統廃合による郵便局員の雇用問題に直面する。

郵便局員は公務員なので、原則クビはない。禁固刑以上でないと、クビ切りができない。
一生安泰がそうでなくなるわけです。

また、裁判所による通知などは公務員が運ぶという仕組みになっていますので、
それに対してどうするのかという声があり、
そのため政府案では「郵便士」という資格を与えてはどうか、などの話を持ち出しています。

民営化と現状維持、どちらが望ましい?

結局、どうした方がいいのか?
正直、これだけ色々出てくると、どっちでもいいのかなという曖昧な立ち位置になります。

反対意見での気になるところは雇用に関するところとどの程度の統廃合による利便性が増減するのか。
あとは、どっちみちどのように使われているのかどうか知らないような資金なら、民間にて活用して、産業界を発展させた方が好ましいし。
現行の体制を敷くことで、守られるのは企業側であって、
利用者となる我々には、民営化したことのほうが利便性があると思うのです。

情報の非対象性の問題も出てきますが、
決めるのは消費者側になりますし。
市場は万能なわけではありませんが、合理性のある方向へ流れるのが常ですし。

合理性がある商品であれば、そのうち必要としない商品群は少なくなっていくでしょうし。情報の非対象性についても、短期的には発生するとしても、長期的に見ればさほど影響がないのかな…と思います。
必要なら普及しますしね。

国債の受け皿よりも、増え続ける国債をどうにかすることの方が先決ですし。
プライマリーバランスの黒字化が達成できるのかどうかも、正直妖しい。

アメリカの財政赤字を黒字化させるというのと同等なくらい妖しさ。
昨年は色々あったにせよ、新潟の地震スマトラ島沖地震など。復旧作業に必要なお金はいっぱいありますし。
昨年は考慮する余地はあるにせよ、今後はどう歳出を抑えて、税収との国債との比率を変えるかが問題ですし。


ま、色々と問題を1つ解決しようにも、背景には色々な問題を抱えてるので、曖昧になってしまわないことを望むばかりです。