……凄いのが居る
あれは先月のことだった。
私はサラダを食べたくて、食べたくて仕方がなかった。
他のドレッシングでは心満たされぬ。あれがいいのだ。
もう心は決めていた。早く買って帰って、夕食に召すのだ。
どこで買おうか…?
それが悩みだった。近場には幾つか小売店がある。
食材のみの店もあれば、生活雑貨、生理消耗品を置いている店舗もある。
ついでにSHOP99に寄りたかった私は、近隣では大きめのチェーン店を立ち寄ることにした。
「いらっしゃいませぇ〜」
遠くのレジから来店挨拶が聞こえる。甘くねちっこく、けだるい声だ。
一般にアニメ声とでもいうのか。作られた声なのかイマイチ判断が着かない。
私は直ぐ様、ドレッシングエリアに向かった。場所は判っている。余計な回り道は考えられぬ。
そこでまたあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませぇ〜」
客を捌く時の段取りとしての掛け声のようなものだろう。まるで機械のように繰り返される。おそらく、労働という状況下にあっては、感情など特に持たないだろう。一パートだ。
それでも、その声はやけに耳につく。
既に目的のモノを買い物籠に入れ、レジに向かいつつある。
どのレジだ?
あの声のヌシは。
探そうにも面倒だ。レジはフル回転中だった。声は辺りから響くように耳に入る。
目の前の客が会計を済ませた。
「ありがとぉーございましたぁー」
あの声だ。
目の前のレジ打パートを見た!!
!!!
驚愕だった。凄いモノが見れた。
笑いたくなった。あまりの、凄さに。
彼女が口を開く。
「いらっしゃいませぇ」
もう耐えられそうになかった。
なんなんだ、あの寄せ集められたパーツは。
ありえないくらいの顔だった。
あの顔でこのねちっこい声は、お察しくださいというしかなかった。
もう笑いに耐えながら、支払いを終えるのが大変だった。
「ありがとぉーございましたぁー」
限界だった。笑いがかすかにこぼれた。
ぜひお近くのスーパーにアニメ声の店員が居るか、探してほしい。
凄いヤツが身近にいるかもしれません。